大人の本

「心に緑の種をまく~絵本のたのしみ~」

新潮社 1890円
新潮社 1890円

 

渡辺茂男 著

 

渡辺茂男さんは、児童図書館員を経てJBBY(日本国際児童図書評議会)の設立に尽力、さらに児童文学の国際交流に力を注ぎ、「しょうぼうじどうしゃじぷた」、「もりのへなそうる」をはじめとする絵本・童話、「かもさんおとおり」「どろんこハリ-」などの翻訳などで、日本の子ども達の本の世界を大きく広げてくださった方です。著者にとって長男である鉄太さんの子育てエッセイで始まるこの本は、まさに父親としての著者から子育て真っただ中の鉄太さんへの「バトン」のように思えます。すぐれた絵本を読み聞かせた時、子どもがどんな反応を示したのか、単なる絵本の紹介に留まらず、絵本の魅力をご自身の実体験を通して紹介されています。私自身、もう一度母親をやり直したい、こんな絵本を読んで聞かせたかった、今ならこんなことも知っていたのに・・・と思いはつきません。大人の心にも種をまいてくれる一冊です。

 

「ぼくの絵本 わたしの絵本 ー0歳から6歳までの絵本ガイドー」

プランニング遊2005年 1470円 
プランニング遊2005年 1470円 

石川道子・平田美恵子・湯沢朱実 編/

 

これは、長年読み聞かせをしてきた3人によって書かれた絵本ガイド本です。特徴は、いつもは読み手の3人が、お互い声を出して読み合い、聞き手として本を選んでいること。そうすることで絵本は「読んでもらうもの」と実感できたそうです。本の紹介は親しみのある文章で、実際に子どもに読み聞かせたことが随所にうかがえます。子どもの回りにはほんとうに多くの本が存在していますが、短い子ども時代に、子どもの年齢とその成長に合った絵本を手渡すのが大事だということで、本の紹介は年齢ごとに纏められています。また挙げられた93冊の絵本を総て読まなければならないということではなく、その中から子どもに合ったもの、好きなものを選ぶようにという言葉が添えられていることからも、著者たちの子どもを尊重している姿勢がわかります。表紙だけでなくページ内がカラーで見られるのもうれしいです。(運営 海保由子


「オスカー・ワイルドに学ぶ人生の教訓」

グレース宮田 著  

 

これほど人の心を捉えるコピーはないのではないでしょうか。著者はウン十年前にだんだん文庫に通っていました。幼年期を英国で過ごし、帰国。慶応義塾大学法学部を経て、オスカー・ワイルド研究を始め、2007年には専修大学大学院博士課程修了。米国で出版された研究書『Oscar Wild and Class』は、大英図書館やオックスフォード大学図書館にも所蔵されているそうです。アイルランド出身、同性愛者、非貴族階級と異端であったワイルドが、保守的な19世紀末の英国ヴィクトリア朝時代の社交界でその地位を確立した秘密を、軽妙な文章と原文の英文とで浮かびあがらせています。ぜひご一読を!(運営 海保由子

 

「消えゆく言語たち~失われることば、失われる世界~」

新曜社 3360円
新曜社 3360円

ネトル・ダニエル、ロメイン・スザンヌ著 島村宣男訳

 

世界には六千もの言語が存在するのに、それが次世紀までには半数以上が消滅してしまうであろうと危惧されています。言語が消滅して、英語などの強い言語に統一されていくことは、一見世の中を便利に動かしているかのようにみえますが、実はそれまで培ってきた豊かな文化を失っていることでもあるのです。政治的な力関係によって弱い言語が禁止されること、同化されていくこと、経済の力にながされていること、英語と混ざることによって単純化されてる歴史、様々な危機が言語に降りかかっています。この本は言語の起源や背景を論じることから、それの持つ文化がいかに豊かであるかに言及し、その保護の大切さを説いています。そして絶滅に瀕している動植物や環境を保護するように、マイノリティ言語を保護することの必要性を訴えています。なぜなら環境の破壊が起こっているところから言語の消滅が起こっているからであり、ふたつの問題は表裏一体、ひいては環境を守り、マイノリティ言語を守ることこそ、人間の存続にかかわることだからなのです。重たいテーマではありますが、目をそむけてはいけない事実だと思います。

「無国籍」

新潮社 2005年 1470円
新潮社 2005年 1470円

陳天璽 (ちんてんじ)著

 

海外との行き来が簡単になった世の中をボーダレスという言葉で表すことがある。国の境目がなくなったような錯覚に陥るが、出入国時には自分が属する「国籍」を避けては通れない。赤いパスポートを手にするとき、自分が日本人だと改めて思う。外務大臣の一文は日本に守られていると思わせる。

この本により「無国籍者」の存在を知り、彼らがなんの後ろ盾もなく生きていかなければならない事実、圧倒的にせばめられている権利に驚いた。なぜ無国籍者となったか、アイデンティティは国籍と関係するのか、など全力でぶつかる著者の体験を読み、それをどういう形で受けとめていくのか、また自分の国籍と違う場所で暮らすこと、についても考えてみたい。(運営 海保由子

「物語が生きる力を育てる」

岩波書店 2008年1680円 
岩波書店 2008年1680円 

脇 明子 著

 

「いまの子どもたちが何よりも必要としているのは、人間とのかかわり、自然とかかわる実体験であって、それらをますます不足させることになるだけの『読書推進』なら、しないほうがよっぽどましなのです。『なんでもいいからたくさん読め』と~中略~そんなまちがいを誘発しないためには『なんのための読書か』ということをよほど慎重に考えておかねばなりません。」(あとがきより)

これは私たちの共通の課題であり、いつでもきちんと意識していたいもの。

この一冊を繰り返し読んで、慌てることなく、量にこだわることなく、子ども達によい本を(物語を)手渡していきたい。(運営 海保由子